「ふんふーん♪」
時が経ち、自宅を目指している俺の横に、なぜかユカが鼻歌混じりに付いてきている。
「嬉しいなぁ、まさかユウトくんが会津部に入ってくれるなんて!」
「言っとくけどなぁ、俺は無理矢理に入らされただけなんだからな!
べ、別に勘違いしないでよね!アンタのためじゃないんだからね!」
「まぁまぁ、会津部はきっと、ユウトくんも気に入るはずだ!」
「気に入る予感が1ミクロンも感じられない」
などと不毛な会話をしながら歩いていると、何やら周囲の視線を感じ始める。
周囲にいる、町の人間A、町の人間B、町の人間Cどもが、口々に呟いている。
「うわ、あの女の子、超かわいい…」
「いいな、あんな美人と一緒に歩けるなんて…」
「それと引き換えに、隣にいる男は何?
なんで、あんな美人と歩けてるのに目が死んでるの?」
「枯れ果ててるのか?
あの男は、若くして枯れ果ててるのか?」
超露骨。超うぜぇ。
まぁ正直、ユカは可愛い。かなりの美人だし、スタイルもいいし胸もデカイ。(露骨)
だが、美人であればある程、過去のユカを知っている俺はどうしても萎えてしまう。
あの、無抵抗でいじめられまくりで、顔面ぐちゃぐちゃにして俺に泣きついてきた時の、どうしようもない、ただただ同情してもらうことに生き甲斐を感じていたかのような、人間として腐り果てていた時のユカを思い出すとなぁ。
(露骨)
しかし、あんなユカが、現在はどうしてこんなにも変化したのか…。
なんか、会津に目覚めたお陰だとか、そんな意味不明なことを言っていたような。
などと考えているうちに、帰宅前に入ろうと思っていたコンビニに着いた。
俺がコンビニに入ると、当たり前のようにユカも付いてきた。
ていうか、なんで付いてくるの?
犬?犬なの?
「ユウトくんは、コンビニで何を買うタイプなんだ?」
「ほっとけ。別になんでもいいだろ」
そう言いながら、俺は目的の物を手に取る。
「おお!スルメか!ユウトくんはスルメが好物なのか?」
「うぜぇ。少なくとも、お前よりもスルメの方が好きだよ」
などと言いながらレジに並び、俺はスルメを購入する。
その時。
突然、サングラスにマスク姿の、明らかに怪しい人間が店内に入ってきた。
そして、手に持っているナイフを店員に突きつけた。
「金を出しやがれ!さもないと、このナイフで刺すぞコラァ!」
店員は怯えながら叫ぶ。
「ひぃいい!命だけはー!」
あ、強盗だ。
強盗と店員のやり取りを見て、俺は一言。
「さて、スルメを買ったから帰ろ」
その瞬間、強盗と店員は同時に叫ぶ!
「この状況でなにを普通に帰ろうとしてんだテメェぇえええ!!!!!!!!!」
「え?なに?帰っちゃ駄目なの?」
すると、ユカは俺を一瞥して言う。
「さすがユウトくん!
目の前にコンビニ強盗がいようとも、自分に関係なさそうなら普通に帰ろうとするとは!」
なに?褒めてんの?
それとも遠回しにディスってんのか?
そして強盗は、再び強盗活動を再開させる。
「そ、それはそうと、早く金を出せやコラァ!」