「ふーっ」
俺は保健室のベッドに寝転がり、図書室で借りていた本を開く。
「あら、本が好きなの?珍しいわね」
そう言う保健室の先生に、俺は
「別に珍しがられても…って感じ…」
「ねえ、さっきまで死んだ魚のような目をしてたけど、本を見てるときは目つきが違うのね」
「は…?」
「ねえ、話してくれない?
あなたには、悩みがありそうに見えなくもないわね」
「別に…悩みがあったとしても、わざわざ人に話すような悩みでもないよ。
ましてや、保健室の先生に悩み相談なんて、ベタすぎるだろ」
すると先生は、俺の顔を覗き込みながら言う。
「私の名前は、ヒロコっていうの。
ヒロコ先生とでも呼んでちょうだい」
「………」
「なあに?キョトンとして」
「いや、ヒロコ先…生って、ちゃんと保健室の先生ぽい顔できるんだな、って思って…」
「んもう、失礼しちゃうわ。
それで、話してくれる?
キミの悩みを」
「なんでそんなに、俺の悩みを聞きたいの」
『保健室の先生として、生徒の悩みを聞くのは当然のことだ』
俺は、そういう回答を予想していた。
するとヒロコ先生は、自分の豊かな胸に手を当てながら言う。
「私はね、遠い宇宙からやってきた、地球外生命体なの。
地球上の生命体…つまり、あなたたち『地球人』を調査するために、この『会津ひだまり高校』に、保健室の先生として忍び込み、こうやって生徒たちの悩みを聞いたりしながら地球人を調査しているのよ」
おっと、いきなりファンタジックな妄想話をぶっぱなしてきやがった。
俺は一言。
「そんなワケねーだろ。しばき倒すぞ」
「ふふっ、信じるか信じないかは、アナタ次第…」
ヒロコ先生は、そうつ呟きながら
怪しく笑った。