ヒロコ先生は、口元に笑みを浮かべながら俺を凝視する。
「ところで、ユウトくん…」
「え、なんで俺の名前しってんの。アンタに名乗った覚えは無いんですけど」
「わざわざ都会から会津に引っ越してきた物好きなんて、もう教師は全員知ってるわよ~」
「いや、だから、別に好きで会津に来たワケでは」
「それはそうと、校庭では体育の授業が始まったみたいね?」
ヒロコ先生はそう言いながら、校庭に視線を移す。
クラスメイトたちが、体育の男性教師と共に準備運動をしている。
「準備運動のあとには、何が始まるのかしらね?」
「あーなんか、男女混合でサッカーやるとか…」
「男女混合でサッカーだなんて、なかなかいやらしい発想ね…
あの体育の先生、体育と保健体育をも混合し過ぎなんじゃないの?うフッ…」
うフッ…じゃねーよ。
どこをどう考えればやらしいんだよ。
「サッカーだなんて、ダルいしウザイったらねぇな。
やっぱりサボって正解だったわ~」
俺がそう呟くと、ヒロコ先生が
「あ、そうだわ!」
と声をあげると同時に、指をパチン!と鳴らした。
その瞬間
ガシャアン!!!
「!?」
保健室のガラスを突き破り、一人の人間が乱入してきた。
「な、なんだ、コイツは…」
俺は思わず声をあげる。
乱入してきた人間は、俺と全く同じ姿をしていた。
ガラスを突き破って乱入してきたそいつは、受け身を取ると同時に1回転して着地した。
そして俺たちに向かってキメポーズを取ってみせた。
『どうも!ユウトくんのコピーアンドロイド、ユウト2号です!』
そいつの声はやや電子音がかっているが、俺と同じ声のくせにハイテンションな言動をする。
『いやぁ、今日はとはてもいい天気だね!
まさにサッカー日和だと思わないかい?』
よく見ると、ユウト2号はすでに体育着の姿になっている。
ヒロコ先生は、ユウト2号と俺を見比べる。
「いやん、ホントにそっくりだわ~。
この『ユウト2号』はね、私が宇宙から持ち込んだ『コピーアンドロイド』でね。コピーしたい人間の容姿、声をコピーできるのよぅ」
「性格は、ぜんぜん俺にコピーできてないみたいだけど」
「あえて、ユウト2号の性格はユウトくんとは正反対にしてみました~!」
嫌な予感がする。
「一体、何が目的でユウト2号を作った?
しかも体育着だし、サッカー日和とかほざいてんぞ」
「もちろん、ユウトくんの代わりに、ユウト2号を体育の授業に参加させるのよ~!」
嫌な予感が的中した。