会津部の時間ですよ!

会津に夢も希望も抱いていない主人公が、会津を楽しむための部活に強制入部させられる物語。(※この物語はフィクションです。たぶん)

≪第6回≫もう一人の自分

ヒロコ先生は、口元に笑みを浮かべながら俺を凝視する。

「ところで、ユウトくん…」

「え、なんで俺の名前しってんの。アンタに名乗った覚えは無いんですけど」

「わざわざ都会から会津に引っ越してきた物好きなんて、もう教師は全員知ってるわよ~」

「いや、だから、別に好きで会津に来たワケでは」

「それはそうと、校庭では体育の授業が始まったみたいね?」

ヒロコ先生はそう言いながら、校庭に視線を移す。
クラスメイトたちが、体育の男性教師と共に準備運動をしている。

「準備運動のあとには、何が始まるのかしらね?」

「あーなんか、男女混合でサッカーやるとか…」

「男女混合でサッカーだなんて、なかなかいやらしい発想ね…
あの体育の先生、体育と保健体育をも混合し過ぎなんじゃないの?うフッ…」

うフッ…じゃねーよ。
どこをどう考えればやらしいんだよ。

「サッカーだなんて、ダルいしウザイったらねぇな。
やっぱりサボって正解だったわ~」

俺がそう呟くと、ヒロコ先生が

「あ、そうだわ!」

と声をあげると同時に、指をパチン!と鳴らした。

その瞬間

ガシャアン!!!

「!?」

保健室のガラスを突き破り、一人の人間が乱入してきた。

「な、なんだ、コイツは…」

俺は思わず声をあげる。

乱入してきた人間は、俺と全く同じ姿をしていた。

ガラスを突き破って乱入してきたそいつは、受け身を取ると同時に1回転して着地した。

そして俺たちに向かってキメポーズを取ってみせた。

『どうも!ユウトくんのコピーアンドロイド、ユウト2号です!』

そいつの声はやや電子音がかっているが、俺と同じ声のくせにハイテンションな言動をする。

『いやぁ、今日はとはてもいい天気だね!
まさにサッカー日和だと思わないかい?』

よく見ると、ユウト2号はすでに体育着の姿になっている。

ヒロコ先生は、ユウト2号と俺を見比べる。

「いやん、ホントにそっくりだわ~。

この『ユウト2号』はね、私が宇宙から持ち込んだ『コピーアンドロイド』でね。コピーしたい人間の容姿、声をコピーできるのよぅ」

「性格は、ぜんぜん俺にコピーできてないみたいだけど」

「あえて、ユウト2号の性格はユウトくんとは正反対にしてみました~!」

嫌な予感がする。

「一体、何が目的でユウト2号を作った?
しかも体育着だし、サッカー日和とかほざいてんぞ」

「もちろん、ユウトくんの代わりに、ユウト2号を体育の授業に参加させるのよ~!」

嫌な予感が的中した。