「きゃーっ!ユウトくん、かっこいい!」
「こんなにも運動神経が良かったなんて意外過ぎぃ!」
「目が死んでなくて、イキイキした目をしてるユウトくんって、こんなにイケメンだったんだぁ~!」
「アタシ、ユウトくんのファンになりそうー!」
校庭でサッカーをしつつ、華麗に舞うユウト2号は
意外にも人気が出た。
サッカーボールを足で操りながら、蝶のように舞い、蜂のように刺す。
保健室から女子たちの黄色い声を聞きつつ、俺は顔を覆う。
「もうやだ…。色んな意味で自分が否定されまくってる…」
「ユウト2号、最高じゃない。
女子にも男子にも人気が出てるわよ~」
ヒロコ先生は、人の気も知らずにのんきに体育を鑑賞している。
「恥ずかしすぎ…もう学校行けねぇ」
まさか、体育をサボった結果にこんな仕打ちを受けるとは思わなかった。
校庭からは、活発なクラスメイトたちとユウト2号の声が響いてくる。
「ユウト、パス!」
『任せろ!シュートだ!』
「ユウトくん、かっこいいー!」
「女子ー、うるせぇぞー!
でも、今日のユウトはマジで最高だぜー!」
俺にできることは何も無く、ただ校庭を眺めているだけだ。
その時、女子の1人にサッカーボールが飛んで行った。
「きゃあっ!」
恐怖で、反射的に目を瞑る女子。
『危ないっ!』
ユウト2号は素早く前に出て、サッカーボールを胸で受け止めた。
宙に飛び、そして落下してきたボールを、ユウト2号は器用に数回リフティングしてみせる。
そして『ヘイ、パス!』と言いながら男子にボールを蹴って見せた。
ユウト2号に守られた女子は、ユウトの背中を眺めながら、目がハートマークになっていた。
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