会津部の時間ですよ!

会津に夢も希望も抱いていない主人公が、会津を楽しむための部活に強制入部させられる物語。(※この物語はフィクションです。たぶん)

≪第20回≫妬みの視線

「ふんふーん♪」

時が経ち、自宅を目指している俺の横に、なぜかユカが鼻歌混じりに付いてきている。

「嬉しいなぁ、まさかユウトくんが会津部に入ってくれるなんて!」

「言っとくけどなぁ、俺は無理矢理に入らされただけなんだからな!

べ、別に勘違いしないでよね!アンタのためじゃないんだからね!」

「まぁまぁ、会津部はきっと、ユウトくんも気に入るはずだ!」

「気に入る予感が1ミクロンも感じられない」

などと不毛な会話をしながら歩いていると、何やら周囲の視線を感じ始める。

周囲にいる、町の人間A、町の人間B、町の人間Cどもが、口々に呟いている。

「うわ、あの女の子、超かわいい…」

「いいな、あんな美人と一緒に歩けるなんて…」

「それと引き換えに、隣にいる男は何?
なんで、あんな美人と歩けてるのに目が死んでるの?」

「枯れ果ててるのか?
あの男は、若くして枯れ果ててるのか?」

超露骨。超うぜぇ。

まぁ正直、ユカは可愛い。かなりの美人だし、スタイルもいいし胸もデカイ。(露骨)

だが、美人であればある程、過去のユカを知っている俺はどうしても萎えてしまう。

あの、無抵抗でいじめられまくりで、顔面ぐちゃぐちゃにして俺に泣きついてきた時の、どうしようもない、ただただ同情してもらうことに生き甲斐を感じていたかのような、人間として腐り果てていた時のユカを思い出すとなぁ。
(露骨)

しかし、あんなユカが、現在はどうしてこんなにも変化したのか…。

なんか、会津に目覚めたお陰だとか、そんな意味不明なことを言っていたような。

などと考えているうちに、帰宅前に入ろうと思っていたコンビニに着いた。

俺がコンビニに入ると、当たり前のようにユカも付いてきた。

ていうか、なんで付いてくるの?
犬?犬なの?

「ユウトくんは、コンビニで何を買うタイプなんだ?」

「ほっとけ。別になんでもいいだろ」

そう言いながら、俺は目的の物を手に取る。

「おお!スルメか!ユウトくんはスルメが好物なのか?」

「うぜぇ。少なくとも、お前よりもスルメの方が好きだよ」

などと言いながらレジに並び、俺はスルメを購入する。

その時。

突然、サングラスにマスク姿の、明らかに怪しい人間が店内に入ってきた。

そして、手に持っているナイフを店員に突きつけた。

「金を出しやがれ!さもないと、このナイフで刺すぞコラァ!」

店員は怯えながら叫ぶ。

「ひぃいい!命だけはー!」

あ、強盗だ。

強盗と店員のやり取りを見て、俺は一言。

「さて、スルメを買ったから帰ろ」

その瞬間、強盗と店員は同時に叫ぶ!

「この状況でなにを普通に帰ろうとしてんだテメェぇえええ!!!!!!!!!」

「え?なに?帰っちゃ駄目なの?」

すると、ユカは俺を一瞥して言う。

「さすがユウトくん!
目の前にコンビニ強盗がいようとも、自分に関係なさそうなら普通に帰ろうとするとは!」

なに?褒めてんの?
それとも遠回しにディスってんのか?

そして強盗は、再び強盗活動を再開させる。

「そ、それはそうと、早く金を出せやコラァ!」