「失礼しまーす。体調が悪いので休ませてくださーい」
俺は、やる気の出ない体育の授業をサボるために保健室を訪れた。
今日が初めての保健室デビュー日。
ちゃんとサボらせてくれるかな。わくわく。
すると、椅子に座っていた、保健室の先生らしき人物が振り向いた。
「あら、大丈夫…?具合悪いの…?」
そう言う保健室の先生らしき人物は、白衣を着ているものの、白衣の下に着ているスーツは胸元が大きく広げられ、立派な胸の谷間を覗かせている。
しかも、なぜかスカートがやけに短い。そこから覗く、すらりと延びた長くしなやかな脚は、ブラウン色のストッキング。
足元はハイヒールだ。
「エロ漫画に出てくる保健室の先生かテメーは!!!!!!」
あ、やばい。
あり得ない光景に、俺は思わず叫んでしまった。
すると先生らしき人物は、メガネをクイッと上げながら俺を見上げる。
「具合が悪いんじゃなかったの?
具合の悪い人間が初対面である保健の先生に、するどいツッコミを入れるなんて聞いたことがないわよ…?」
そう言いながら脚を組み代え、ウェーブのかかった長い髪をかき上げる。
結局『保健室の先生』なのかよ。
むしろ、保健室の先生のコスプレをしたキャバクラ嬢だと言ってくれたほうが違和感なかったわ。
ため息をつく俺に、保健室の先生はニヤリと笑みを浮かべながら言う。
「ま、いいわ。他に誰もいないんだもの…」
そして立ち上がり、ヒールをコツ…コツ…と鳴らしながら俺に近付いてくる。
そして至近距離に、いや、密着するような距離感になり、その細い人差し指で俺の胸元を軽く突つき、俺の目を覗き込みながら微笑む。
「ちょっと、先生の相手を、し・て・く・れ・る…?」
パァアアン!!!!!!
「きゃんっ!」
次の瞬間、俺は履いていた上履きで
保健室の先生の頭をひっぱたいていた。
「痛ぁい!な、なにするのよぅ!?」
頭をおさえて床にしゃがみ込む先生。
そんな先生を、俺は見おろす。
「なにするの、は、俺のセリフですよ先生。
男子高生が誰でも、そういう身の振る舞いをすれば喜ぶと思わないで欲しいですね。
で、どうするんだ…」
先生は、涙を浮かべながら首をかしげる。
「ど、どうするって…?」
「言わなきゃ分からないのか、この痴女が。
俺を保健室で、授業をサボらせるのか、サボらせないのか。
返答次第では、アンタを再び、しばく」
「えっ…!そんな強引なこと…!」
「黙れ。お前には最初から『はい』と言う選択肢しか存在しないんだよ。いいから言えよ。
ひとこと『はい』と」
「…………はい…っ…」
そう言う先生は、なぜか頬を赤らめ、微妙に嬉しそうな表情をしていた。