不敵に笑みを浮かべるその女子は、顔が綺麗なだけに、より一層のサディスティック感を醸し出す。
不良たちは、口々に
「ど、どうする…?
今日こそ、あの女を八つ裂きに!
…できたらいいのになぁ~」
「あの女のせいで、俺らはいつも堂々と悪さできねーんだよ!あの正義感オンナ!」
「そうだよな!今日という今日は、全員であの女にヤキ入れてやろうぜ!」
「そうだ!全員でかかれば、きっとやれる!できる!自分たちのチカラを信じるんだよ!」
「そうだ!俺たちの『絆』のパワーで!」
などとほざいている。
不良が絆だのなんだの言い出すのってどうなの?
悪い道に走りたいのか、道徳的な道に進みたいのか、マジでどっちなの?
すると、不良のひとりが
女子に向かって歩みだした。
「テメー…今日という今日は、俺らの邪魔はさせねぇからな!
大人しく、その転校生を差し出せば痛い目に遭わなくて済むぜ?」
そう言いながら、女子の胸ぐらを掴もうとするとした瞬間。
「あひゃあっ!?」
ダンッ!
不良が女子の前で、空中一回転して地面に叩きつけられた。
女子は、地に落ちた不良を見下ろす。
「どうした?私を痛い目に遭わせるのではなかったのか?」
「テメー、俺に何しやがった!」
「説明するとだな、お前が私の胸ぐらを掴もうとした『チカラ』を利用して、お前を地面に叩きつけた、それだけだ」
「いや、意味わかんねーし!」
その時、別の不良が
「これ以上、お前の好きにさせてたまるかぁあああああ!」
と叫びつつ、女子に向かって鉄パイプを振り下ろす!
「ちょ、危な…」
さすがに俺がそう言いかけた、その時。
女子は腰の日本刀を抜くと同時に
自分に向かってきた鉄パイプを
キィン!
と音を立てつつ
真っ二つに斬った。
半分になった鉄パイプの、落下する音が周辺に響く。
「テメー、その刀、やっぱり本物なのかよ!?」
不良の言葉に対して、女子は一言。
「安心しろ。Am●zonで購入した模造刀だ」
鉄パイプが斬れる模造刀って、もう充分に殺傷力があるよね。
何をどう安心しろというの?
女子は、日本刀(模造刀)を不良たちに向けて言う。
「さぁ、やる気なら、お前たち全員でかかってこい」
「望むところだぁああああっ!!」
…五分後。
不良たち全員が、女子の手によって気絶した中で。
その女子ただひとりが。
無傷のまま、息を切らすこともなく
静かに佇んでいた。
女子が振り返り、余裕の笑みを浮かべて俺を見る。
「大丈夫か?災難だったな。
怪我とかしてないか?」
「まぁ…大丈夫だけど」
俺がそう言うと、女子は笑いながら言う。
「そのマイペースさ、昔と全然変わらないな、ユウトくんは…」
「は?
なんで俺の名前を知ってんの?
田舎の高校では、転校生の名前は全校生徒に一気に覚えられちゃうわけ?」
「そんなんじゃない。
昔、私とよく一緒にいただろう?」
「いや、それはない。
俺はお前なんか知らない。
そんな、腰に刀ぶら下げてるようなバイオレンス女なんか」
「覚えてないのか?
私は、お前をよく覚えてる。
私の名前は…
『ユカ』だよ」
ん?昔、よく一緒にいた『ユカ』という名前の女?
…。
俺は、女に向かって一言。
「マジか。」
女は一言。
「マジだ。」
マジかよー。